



その後のことを少しだけ。
「あれ?お客様、たぶん、お久しぶりでしょ?」
目を細めてお客様の顔を見る。そりゃー舐め廻すようにみてやる。
「う、わかる?」
お客様は困った表情、というか情けない表情を浮かべる。
「わーかーりーまーすぅー。で、どれくらいぶりですかぁ?」
「あう、い、一年、くらいかなぁ?」
嘘ばっか。前来たのは二年以上前でしょうに。
「ま、何年ぶりでも来て下さったのなら嬉しいですけど。で、今回はどのコンテンツをご所望なんですか?」
「あ、うん。とりあえず一通り回ってみます……」
そそくさとハイパーリンクに乗っかろうとするし。
「チョイ待ちです」
「な、何か?」
アタシはくいくいと親指を後ろへ向ける。
「へ?なに?は、拍手?」
「そうそう、ちゃんと、拍手は忘れずにお願いしますよ?」
「も、もちろんだよ。俺、庵さんの顔見てココ入って来たんだから。ほんと、庵さん居なきゃ気不味くて入れ無かったよ」
「あら、それは冗談でも嬉しいです」
「冗談じゃないってば。庵さんが居れば、久しぶりでもそうやって変らず絡んでくれるじゃん。それがどれだけありがたいか……」
本当に、久しぶりに来るサイトは入りにくいんだよ?なんてお客様は言う。
「はいはい、それじゃ今度は気不味くなる前に起こし下さいな」
「う、は、はい。そうしますっ、つーか、庵さん昔とキャラ変った?」
アタシはそんなことありません、とつっぱねながら、とりあえずダイアリーにでも押し込んどけって感じでお客様をご案内する。
「ふぅ、暫くは客足も引く時間帯ね」
ふむ。
キャラ、変った、か。
あの日以来、確かに変ったと思う。それが良い方だったのか悪い方だったのかは判らない。
だって、本来なら先ほどのような対応はアウトだと思うし。誠心誠意って言葉から随分遠いような気もするもんな。
それでも、アタシはアタシらしくやれていると思ったりもする。
相変わらずお見送りは寂しいし、辛い。時には本気で泣いてしまうことだってある。
でも、アタシはもう二度とログを弄ったりはしない。
例えアタシの直感が、二度と来ないお客様だと判別したとしても、ね。
だって、それが絶対じゃないって知ったから。アタシがここで笑っていれば、色々なことを変える事が出来ると知ったから。
そして、こんなアタシでも何かの役に立ててるってわかったから。
何故アタシにココロが在るのかなんて、未だに判らない。ココロがなければ何かと都合が良い場合だってあるのにね。 でも、
でもさ、それはそれでも良いじゃない、今ではそう思える自分がいる。
だからアタシはこの場所で笑い続けるんだ。
そう、強くココロに刻み込んで。
今日もいつも通り客足の調子がいいみたいだ。
調子の良さを例えるなら、鼻歌を口ずさみながら洗濯物を、こう青空の下でぱんぱんってやっちゃうくらい。
まぁ、実体が無いアタシにとっては文字通りモノの例えでしかないのだけど。
心地よい量子の風が吹き抜けるなか、パチパチと拍手の音が聞こえる。
ようし、今日も絶好調だ。
っと、またお客様からのアクセスが。
「あれ、お客様お久しぶりですっ!ようこそ『たくたま』へっ!今日はどのコンテンツをご所望ですかっ?」

アタシの楽しいお仕事は、どこまでも、どこまでも続くのだ。
おしまい。